■ 今週のTOPIC「高齢期でも安心して暮らす家!!」
平均寿命が延び、高齢化社会が進む中、
ご自身の老後の住まいについて
考えてみたことがありますか?
高齢化社会になり、
高齢者の住まいは多様化していますが、
できることなら住みなれた自宅で
過ごしたいと願う人は多いと思います。
老後といっても60代から80代、90代と
その幅は広く、
どのような住まいがよいかは
心身の状態や経済状態によって
異なってきます。
心身の状態に注目すると大きくは
以下の3ステージに分けられます。
(年齢は目安です)
- 高齢期の3ステージ
①まだまだ自立した生活ができる(60才~)
②見守りや支援が必要(75才~)
③介護が必要(88才~)
①や②に該当する時は、
比較的自立した生活が送れる状態で、
自宅はもちろん子どもとの
同居、近居も可能です。
この時期、元気なうちに
施設や高齢者住宅への住み替えを
しておくということも考えられます。
③に該当するようになると、
常時介護を受けるために
グループホームや介護型有料老人ホーム、
特別養護老人ホームなどへの入所が
必要になってくるかもしれません。
しかし、どのステージにいようとも、
「できるだけ長く、
住みなれた我が家で暮らしたい」
と願う人は多いのです。
◆高齢になって一番きついのは「階段」
「今の住まいが体にきつくなってきた」
と嘆く高齢の方のお話をよく聞きます。
「2階に上がるのがとても大変だ」
とおっしゃるのです。
階段を上るのが苦になってきたら
「1階に生活拠点を移す」
という方法もあります。
生活する上で必要な設備である
キッチン、浴室、トイレ、
そしてそれらの水回りの近くに
高齢者用の個室が用意できれば可能です。
しかし、
もともと2階に水回りがあり
1階に給排水設備がない場合は、
新設となるため、手間や
工事費がかかります。
また、ホームエレベータを
増築する方法も考えられますが、
いずれも大がかりなリフォームとなり、
高齢になって取りかかるには、
実際にはとても大変なことになります。
◆最初から取り入れておきたいこと
高齢の方から
「家を建てる時に
高齢になった時の事なんて考えなかったし、
だれも教えてくれなかった」
と言われると、
例え自分たちが、設計したわけでなくても、
家づくりに携わる人間として
とても申し訳ない気持ちになります。
そこで今回は、
高齢になっても住み続けるために、
家づくり当初から
取り入れておくべきことを
いくつかご提案します。
◆水回りは1階に
先ほどの例からも、
高齢になった時のことを考えると、
日常生活に必要な主な水回りは
1階に設けておくと良いでしょう。
しかし足腰の丈夫なうちは
日当たりのよい2階に
リビング・ダイニング・キッチンを
設けたいと考える場合は、
1階のどこかに将来的に
ミニキッチンを設けられるよう
あらかじめ給排水管を配しておくのも
一つの方法です。
◆水回りの位置、寝室の位置も想定して
将来的なリフォームで対応する方針で、
1階にあらかじめ給排水管を設けておく場合は、
水回りの位置と寝室の位置も
充分考慮して想定しておきましょう。
例えば、高齢になると
自室で過ごす時間が増えます。
自室の広さはベッド、机を置いて、
車イスで回転するためには
最低6畳程度の広さが必要です。
浴室、トイレの広さは
介助者の分も見込んで
広めにとることが望ましいのですが、
その際ドアではなく引き戸にすると
スペースの有効活用ができます。
またそこで、長い時間を過ごすため、
高齢者の部屋は日当たりのよい
快適な場所がおススメです。
そしてトイレは
部屋のすぐそばに設けられるように
計画してください。
◆3階建てならホームエレベーターも検討する
最近では木造で3階建ての家も
珍しくなくなってきましたが、
3階建ての3階部分に主な居室を設ける場合は、
ホームエレベーターの設置を検討しましょう。
車イスが入れる大きさの
ホームエレベーターがあれば、
ずっとそのまま3階で生活することも可能です。
ホームエレベーターを
後からつけるのはとても大変なことですので、
設計段階で検討してみてください。
◆手すり下地を入れておく
廊下など水平移動する場所に
手すりを設けておくと、
高齢者が自力で歩く助けになります。
しかし、若いころには水平移動のための
手すりは不要ですが、
廊下の壁仕上げ材の裏側に、
手すり取り付け用の補強下地材を
あらかじめ組み込んでおきましょう。
そうすることで、手すりの設置が容易になり、
見栄えもそこないません。
また、玄関の上り框や階段、
その他床に段差のある部分などには、
縦手すりがあると事故防止につながります。
これは高齢者だけでなく子どもや大人でも、
上下の動きを介助する、
または転倒・転落を防止するという意味で、
役に立つ手すりになります。
出来れば、最初から取り付けておくことをお勧めします。
◆手すりの設置は、その人にあった寸法で
手すりの取り付け位置は
床から○センチ~○センチと
一応マニュアルもありますが、
実際に使う人が使いやすい位置に
取り付けるのが理想的です。
◆床段差は最初からなくす
高齢になると、
歩行中に少しの床段差でもあれば
つまづきやすくなり、
転倒の原因となります。
また万が一、車イスの生活になった時も、
段差はやはり極力ない方がよいのです。
床段差を後からリフォームで解消するのは
とても大変な作業となるため、
家づくり当初からなるべく
床段差は解消しておくことが
望ましいと言えます。
家の前の道路から自宅玄関までは、
どうしても段差が生じると思いますが、
後々スロープを増設できるスペースを
想定しておくとよいと思います。
◆車いすが走行するための有効幅員は?
廊下や出入り口の幅も、
のちのち手すりをつけたり
車イスで走行する可能性を考えると、
最初から広めにしておいた方がよいでしょう。
壁の位置を変更するリフォームは
大がかりなリフォームと
なってしまうからです。
参考までに、
一般的な木造住宅の廊下有効幅員は
80センチ程度ですが、
車イスで走行するために必要な最低幅は
有効で85センチ程度です。
「玄関から高齢者が主に使う居室まで」
「高齢者の居室からトイレまで」など
日常的によく使うと想定される廊下について、
最初から取り入れておきましょう。
◆高齢者が安心な住まいは自立を支える
高齢になっても
安心・安全に住める家であることは、
自分のことは自分でするという
高齢者の自立を支えることになります。
歩けるうちは自分の足で歩いてもらうことで、
その健康状態をなるべく長く維持することに
つながります。
バリアフリーの意味はそこにもあります。
介護の問題などはありますが、
それでも多くの方が、
いくつになっても住みなれた自宅で
余生を過ごしたいと願っていると思います。
自宅で過ごしたいのに、
住まいの構造に問題があってそれができず、
仕方なく自宅を出ている方も多いでしょう。
家を建てる30代~40代の頃
まだ若くて自分の老後の姿など
なかなか想像できないものです。
家づくりをする時に、高齢になっても
住みやすく暮らししたいのであれば、
後から変更しにくい部分を
家づくり当初から
検討することをおススメします。
それでは、また!!